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きれいになりたかったカエル

パウクァー(お話始めるよ)
パカワー(はーい)
ハポ ザマニザカレ(むかしむかし、あるところに)、孔雀と蛙がおりました。

蛙は、孔雀のきれいな羽がうらやましくてたまりません。毎日池の中から、憧れの目で孔雀の姿を見ていました。ある日、蛙は池から岡に上がると、孔雀のそばによって、思い切って聞いてみました。

「ねえ、孔雀さん、どうしてあなたはそんなにきれいなの? わたしもあなたみたいにきれいになりたいわ。きれいになる方法を教えてくださいな」

気のいい孔雀は、それを聞いてこう言いました。
「そんなこと簡単よ。なんなら今すぐきれいになる方法を教えてあげましょう。まず、火をおこすのよ」

「それからどうするの?」
蛙は、間髪をいれずにたずねました。

「そんなにあわてないの、いいから黙って話を最後までお聞きなさい。火をおこしたら、大きな鍋をかけてココナッツ油を入れるのよ」
孔雀がそう言ったそばから、蛙はまたこう言いました。

「もうわかったわ。そしたらその中にぴょんと飛び込むのね」
「待って、待って。そんなにあわてないの、いいから黙って話をお聞きなさい。そしたらその油が熱くなるのをじっくり待つのよ」

そこで、またもや蛙は口を挟みました。
「もうわかったわ。油が熱くなったらその中にぴょんと飛び込むのね」
「ちがうちがう、そんなにあわてないの。いいから黙って最後まで話をお聞きなさい。油が熱くなったら、鍋を下に下ろして・・・」

孔雀がそう言いかけたところで、また蛙が口を挟みました。
「もうわかったわ。鍋を下ろしたら、そこにぴょんて飛び込むのね」

その後に、「油が冷める間で待ってから」
と続けたかった孔雀は、あんまり蛙がうるさいので、思わず、
「そうだよ」
と怒鳴ってしまいました。

蛙は、待ってましたとばかり、ジュンジュンに煮えたぎったココナッツ油の鍋の中に、ぴょんと飛び込んだのですからたまりません。

ジュワワー・・・
あまりの熱さに驚いて、あわてて飛び出てきたけれど、もう後の祭りです。蛙は大やけどを負ってしまいました。きれいになりたかった蛙は、逆に体中にマバカマバカ(いぼいぼ)がついて、前よりもっとみにくい姿になってしまいました。

「だから、話を最後まで聞いてと言ったでしょ」
孔雀の声を聞きながら、蛙は、やけどでいぼいぼになった体を冷やすため、ぴょんと池に飛び込んで、それきり孔雀の前には現れなかったそうです。

話はこれでおしまい。ほしかったら持っていきな。いらなきゃ、海に捨ておくれ。
(語り手 ジョハ ハミシィ)


「美しくなりたい!」これは、人間の永遠のテーマですね。アンデルセン童話「みにくいあひるの子」を読んで、「いつかは自分も、みにくいあひるの子から美しい白鳥に変身したい」と変身願望を抱いた人も多いことでしょう。

そして、女性なら誰しも、鏡を前に、美しくなれる方法はないかしらとため息をついた経験があるでしょう。ザンジバルの蛙も、その一人。毎日池の中から美しい孔雀を見てはため息をついていたとは、いじらしいではないですか。

それなのに、あわてんぼうの早飲み込みで、孔雀秘伝の美容法を聞き終わる前に、口を挟んで、孔雀を怒らせ、あげくのはてには煮えたぎった油に飛び込んで、ますます醜くなっちゃったとは、なんともお気の毒ですが、蛙の態度は、ものを教えてもらう側の取るべき態度ではないですから、自業自得ともいえますね。

お話の中でも、気のいい孔雀も、蛙がうるさく口を挟む上に、わかってもいないくせに「わかった、わかった」を連発する過程で、だんだんいらいらしていく様子がよくわかりますものね。

とは言うものの、蛙が、一生とれない大火傷を負ってしまうのは、ちと代償が大きすぎるような気もします。でも、よく考えてみれば、私達の実際の生活の中でも、小さな不注意で大事故を起こしてしまったり、不用意に発した言葉で、知らないうちに相手を心底怒らせていたりってこと、多いと思いませんか?

火事、交通事故など人災のほとんどは、元をたどれば誰かのうっかりミスだったということが多いけれど、事故を起こしてしまったからでは、「うっかりしてました。ごめんなさい」ではすまされないですものね。そういう意味では、蛙のうっかりミスは、大火傷に十分値するだけの過ちなのかもしれません。

昔話の中の出来事は、象徴的なことが多いので、大げさに思えるかもしれませんが、実際に起こっているさまざまな出来事を考えれば、けっして絵空事と一言ですますことはできないでしょう。

語り手のジョハちゃんは、11歳。妹3人、弟1人がいるしっかり者のお姉ちゃん。
ジョハちゃんは、一つも教訓めいたことを言わないで、お話だけに徹してくれ、一緒に聞いていた、ほかの子供たちは、蛙が孔雀の言葉に、一々口を挟むところから、すでに笑いが起こり、最後に蛙がマバカマバカ(スワヒリ語:いぼいぼの意)になって、池に逃げ込むところでは、げらげら笑い転げ、「あー面白かった!」と大満足していました。

蛙の「いぼいぼ」という表現が「マバカマバカ」という音のスワヒリ語になると、日本人の私には、蛙の様子が一層間抜けな感じに聞こえてきて、思わず子供たちと一緒に、大声で笑ってしまいました。

でも、あんまり蛙を馬鹿にしすぎると、しっぺ返しがきそうですね。
「蛙の振り見て、わが振り直せ」
皆さん、お互い、うっかりミスには気をつけましょう!