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おおとかげグルグル夫婦

パウカー(お話始めるよー)
パカワー(はーい)

ハポ ザマニ ザ カレ(むかしむかし、あるところに)おおとかげグルグル夫婦が住んでいました。

グルグルは、地面に穴をほって家を作り、二匹で仲良く暮らしていました。

グルグルの亭主は、毎日家から出て、えさを探しに行き、グルグルの女房は、家の中で、掃除をしたり、昼寝をしたりして亭主の帰りを待っていました。

あるとき、グルグルの亭主がえさを探しに家を出てしばらくすると、人間同士の争いが起こり、男たちが戦う地響きのような足音や、叫び声、舞い上がる砂塵で、すごい騒ぎになりました。

グルグルの女房は、夫が無事で帰れるかと心配で、昼寝もしないで待っていました。そこへ、息を切らしたグルグルの亭主が駆け込んできて、こう言いました。
「妻よ、妻よ、外はえらい騒ぎだが、一体何が起こったんだい?」
グルグルの亭主は、人間達の騒ぎに恐れをなし、ぎゅっと目をつぶって、何も見ないで一目散に逃げ帰ってきたのでした。

グルグルの女房は、自分の亭主のだらしなさにあきれ返って、
「あんたは今、外から帰ってきたんでしょう。外に行った亭主が何も見ずに帰ってきて、家にいる女房に向かって、外の騒ぎの様子をたずねるたあ、なんて情けない亭主だろう。あんたなんかと一緒にいても、何にもならない。あたしは、もう男なんかに頼らずに、自分で自分の身を守りながら生きていくよ。あんたも勝手に暮らしな」
というと、さっさと家を出てしまいました。

グルグルの亭主も、あわてて妻の後を追おうと、穴から出たのですが、そのとたんに、人間たちの殺しあう姿が、亭主の目に飛び込んできました。グルグルの亭主は、怖くて、思わずぎゅっと目をつぶると、あわてて家に逃げ込んでしまいました。

その様子を、木の陰から見ていたグルグルの女房は、長い舌で、ペッとつばを吐くと、まっすぐ顔を前に向けて、のっしのっしと、尻を大きく振りながら歩いて行きました。

だから、今でもおおとかげグルグルは、夫婦で暮らさず、それぞれ別々に暮らしているのさ。
話は、これで、おしまい。

ほしけりゃ、家に持っていきな。いらなきゃ、森にすてとくれ。

語り手 ズベダ            


これは、今は亡き、ズベダおばあちゃんから聞いたお話です。

ザンジバルには、あちこちに、大小さまざまなとかげがいて、種類によって、スワヒリ語で、「グルグル」とか、「ケンゲ」と言います。

大きいのは、1メートルぐらいになるのもあって、時々、おおとかげが捕獲されて、縛られているのを見ます。食べると、けっこういけるそうですが、私は食べたことがありません。

さて、このおおとかげグルグル、夫弱虫、妻豪胆の典型のような夫婦に描かれていますが、ザンジバルの人の話では、グルグルは、メスのほうが大きいそうです。

だから、オスが小さな体で急いで歩いているのに対して、メスがでかい体でのっしのっし悠然と(?)歩く姿、そして、夫婦一対で行動しない習性から、こういったキャラクターの設定になったようです。

それにしても、一度は「あんたと別れる!」と捨て台詞を吐いて、外に出たものの、ドアの陰からそっと夫の様子を見ている女房の姿は、とかげといえど、女心は共通だなあと思いませんか。

女性としては、いくら自分から別れを言い出したにしても、家を出て行くかどうかの瀬戸際ぐらいは、夫から力強く引きとめてほしいもの。

グルグルの夫が、このとき数歩でも前進していれば、女房は、夫が自分を捜してくれている姿にぐっときて、思わずすぐに後ろから抱きついて、
「あんた、ごめんね。やっぱりあんたと一緒にいるわ!」
となったのになあと、ズベダおばあちゃんの話を聞きながら、ずいぶん歯がゆく思ったのですが、読者の皆さんは、どんな感想をお持ちでしょうか?

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