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カメレオンには近づくな

今回は、カメレオンをテーマにしたお話です。

カメレオンといえば、体の色を様々に変える。
ゆっくりとした動作で昆虫に近づき、粘液のついた長い舌をすばやく伸ばして、昆虫をくっつけて捕獲する。
眼球が左右に飛び出し、ドーム上のまぶたで覆われていて、別々に動かせる。
指が二股になっている・・・などといった特徴が次々に頭に浮かんでくると思うのですが、実際にカメレオンを見たことがある人は少ないのではないでしょうか。

かくいう私も、アフリカに来るまでは、カメレオンなんて本やテレビでしか見たことがありませんでしたし、ケニアやタンザニアで動物サファリに行っても、ライオンや象、きりんといった大きな動物ばかりに目がいって、木の上で目立たず虫を捕っているカメレオンを見つける余裕などありませんでした。

しかし、実際にアフリカで暮らしてみると、カメレオンは人間にとって身近な動物で、ナイロビでは街路樹でのんびり暮らしている姿、ザンジバルではそこらに生えているキャッサバの葉の上にちょこんとカメレオンが乗っているなんていう光景も珍しくありません。そんなカメレオン達の姿は、昔話やわらべ歌の中にも登場しています。

きょうは、ザンジバルで語られているカメレオンの昔話を2つご紹介しましょう。

1.『カメレオンには近づくな』
むかし、むかし、あるところに、夫婦が住んでおった。

男は朝から畑に行き、いつものようにキャッサバ芋を掘り、土を払ってかごに入れ、キサンブ(キャッサバイモの葉)を摘んで、根元を切って束にして、わらで縛り、キャッサバイモの入ったカゴに載せると、カゴを自転車の荷台にくくりつけ、街に売りにいった。

男は、キャッサバ芋と葉を売った金でいわしを一山買うと、家に帰り、残しておいたキャッサバ芋とキサンブ一束と、いわしを妻に渡した。

でも、その最後のキサンブには、小さな小さなカメレオンがついていた。カメレオンは初め、カゴの上の方の葉にくっついていたが、葉っぱとまるで変わらない色をしながらゆっくりゆっくり下にもぐりこんで、一番底にあった葉の下でじっとしていたので、誰もそれに気づかなかったんだ。

妻はさっそく料理にかかった。キャッサバイモの皮を剥き、ココナッツミルクで煮た。キサンブは、繊維が硬いので、いつものようにキヌ(杵)でトントンついて柔らかくした。そのとき、小さなカメレオンは、キサンブと一緒につぶされてしまったが、何しろ葉っぱと全然かわらない色なので、誰も気づかなかった。

妻はつぶしたキサンブをゆでて、塩、とうがらし、玉葱、ココナッツミルクを入れて、ぐつぐつ煮込んだ。いわしはココナッツ油で揚げて、ココナッツで煮込んだキャッサバイモの一番上に乗せて、さらに煮込んだ。もちろんキサンブと一緒につぶされたカメレオンも、ココナッツでぐつぐつ煮込まれてしまった。

妻は、すっかり用意ができると、キャッサバイモとキサンブを、男用、女用、子供用の3つの大皿にとりわけ、コザの上に置いて、家族を呼んだ。

「ビスミルラー」(イスラム教徒が何かを始める時に唱える言葉、この場合は「いただきます。」の意味)で食べ始め、5分も立たないうちに食事が終わると、皆てんでばらんばらのところでくつろいでいたが、しばらくすると、皆急に腹をかかえて苦しみだし、その日のうちに家族全員が死んでしまった。

それもこれも、小さなカメレオンのせいだったのさ。カメレオンは色が変わるだけじゃなくて、体に毒を持っている。カメレオンはシャターニ(悪魔)の生まれ変わりだから、触ったりじっと見たりしちゃあいけないよ。カメレオンは、あのぐるぐる回る目でなんだってどこだってなんだって見てるのさ。あんまりそばに近づくと、毒のついた舌をぴゅっと飛ばされて、目をつぶされるよ。
カメレオンは悪魔の仮の姿、そんな動物に近づくもんじゃない。

カメレオンの悪魔の化身、のんびりした姿にだまされちゃあいけないよ。

カメレオンの話は、これで、おしまい。
(語り手 ザンジバルのサミーラさん)