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超えてみようよ! 境界線 アフリカ・アジア、そして車イスで考えた援助すること、されること

楽しみにしていた本『超えてみようよ! 境界線』(村山哲也著 かもがわ出版)が、国境という境界線を越えて、ザンジバルに到着!

拙著「アフリカから、あなたに伝えたいこと」と同じ判型だったので、手にしたときから親しみを感じ、表紙を走る越境くんがかわいくて、さらに親しみと興味が☆
にしても、このインパクトは、「太陽の塔」を初めて見た時の驚きがよみがえりました。
どちらも天才的なデザインだなっていう印象です。 
これは、表紙という境界線も、軽く超えていますね!
コロナ禍で滞っていた日本ーZanzibar(タンザニア)間の郵便が復活して、ほんとうにうれしいです。

ということで、楽しみにページをめくりました。
すると、ケニア、フィリピン、カンボジア、ルワンダにおいて、理科教育の分野で国際協力をされていた著者による、各国でのディープな異文化体験とともに、鋭い洞察力でその国々の歴史と現在の様子を見つめたエッセイがぎっしり詰まっていました。

この4つの国名を、アフリカとアジアとで分ければ、ケニア、ルワンダと、カンボジアとフィリピンですが、ジェノサイド(大量虐殺)のルワンダとカンボジアというカテゴリー分けもできてしまいます。
もちろん、本の中には、ルワンダでのジェノサイドとその後、カンボジアのポルポト時代におきた虐殺の背景や今のことなどが、現地に入り込んだ人でなければ見つけられない視点から書かれていました。
一方、第二次世界大戦中に日本軍がおこなったフィリピン人虐殺の歴史を示す首のない像、ケニアでは選挙にまつわる暴動でのことなど、目をそむけて書かなければ、書き手に取って楽でいられる部分も、隠すことなくきちんと公平に書かれており、見事だなと感じました。


そうかと思えば、各国の食文化などの楽しいエピソードもいっぱいで、食を通した異文化体験では、著者の戸惑いから納得への過程も正直に語られていて、私もアフリカという異文化の中でもまれてきましたので、共感する箇所がたくさんありました。

~境界は、身近なところに~
著者は、本の中で、すべてにおける差異を、境界と表現しておられます。
「実は境界って、身近なところにいくらでもころがっている。
 たとえば、子どものころ、学校でじぶんのくらすと違うクラスとの間にはつい良いライバル意識があった。それも境界だったんじゃないだろうか。
でも、その境界は、ほかの学校との境界でもあれば、あっというまに消え去った。
そして今度は、自分の学校とほかの学校との間に境界ができた。・・・・」

国境というような、国と国を隔てるものではなくても、境界線は身近にいつでもあって、常にその位置はかわっているものだと著者は語りかけます。

そういえば、小学生の時によくやったドッチボールも、地面に足で線を描いたときから、すでに相手チームの陣地と自分たちのチームの陣地で、そこを超えるのはタブーとなるんですよね。
でも、ドッチボールが終わったら、その線を踏んでも、消えてしまっても、誰が隣に来ても来なくても、なにも気にならなくなる・・・。
そういうことなのかなと、ぼんやりイメージしました。

このように目に見える境界線でなく、精神面でも、ここからは踏み入られたくないという境界というかバリアのようなものを誰もがもっていると思います。
そこを、言葉や行動、あるときは視線で破られると、人はすごく傷ついてしまいますよね。

~突然の大事故~
著者は、最後の赴任地ルワンダで、乗っていた車が谷底に転落するという大事故に遭い、脊髄損傷という大けがのため、1年以上入院して治療した後も、両足麻痺は治らず、車椅子生活を余儀なくされてしまいます。

つまり、まったく思いがけず50歳で突然、中途障害者になったのです。
もともと、高校野球の監督さんをするほどお元気で、約20年にわたって国際協力の舞台で活躍されていた方が、ある日突然にです。
そこからの著者には、健常者のときには見えなかった境界が、たくさんたくさん見えるようになられたことでしょう。

~ティンガティンガ展で初対面~
私が初めて著者の村山さんにお会いしたのは、昨年9月に延期して開催したティンガティンガ展@横浜。

村山さんは、このティンガティンガ展に、この本で著者&編集者としてコンビを組まれた、かもがわ出版の編集者山家さんと二人でお越しくださいました。

  ~このお写真は、ご許可をいただいて村山さんのブログから拝借しました。お二人とも、お写真と同じく、とっても自然体の方々でした~

このギャラリーに入るには、10段ほどの階段を上がらないと入れない構造になっているので、車椅子の村山さんは、スタッフの男性陣に、車椅子ごと抱えあげられて入場されました。
帰りも同じくおみこしの様に抱えあげられて下に着くと、そこから東京まで電車を乗り継いで帰りますとおっしゃって、車椅子での長距離移動で大変な中、横浜まで来てくださったことに感謝の念でお見送りしたのを覚えています。

車椅子の人にとっては、段差というものがすでに境界になるのですよね。
日本の様に道が舗装されていないザンジバルでも、よくその光景を見ますので、よくわかります。(車いすの人が石や穴ぼこや段差で立ち往生しているのを、周りの人たちがおみこしのように担いで移動する光景)
そのことは、拙著「アフリカから、あなたに伝えたいこと」の「あい17歳」の章にも書きました。

ところで、この会場で村山さんと、お会いした時、
「私も、今度かもがわ出版から、本を出版することになっていて、現在執筆中です」
とおっしゃっていて、拙著「アフリカから、あなたに伝えたいこと」「どうぶつたちのじどうしゃレース」がどちらも かもがわ出版からということから親しみを感じ、その時(2020年9月)から、この本の完成を心待ちしていて、冒頭の言葉となったというわけです。

~オーロラ、見てみたい~!~
この村山さんは、車椅子での生活になってからも積極的に動いておられ、カンボジアで

車椅子姿で、野球の審判をしているお写真も掲載されていましたし、なんと、カナダのイエローナイフという町まで「オーロラ」を見に行かれたこともあるそうです。

本の中に白黒で掲載されているオーロラの写真は、すばらしく幻想的です!
「私もオーロラ見てみたい~!」
っていう気持ちになります。

そういえば、カタール航空の移動中に観た映画「雪の華」でも、オーロラのシーンが出てきて、「行ってみたい~!」って思ったのを思い出しました。

たしか、この映画のオーロラの舞台はフィンランドだったと思いますが、カナダでもオーロラがみえるのですね。イエローナイフっている町の名前もなんだかかっこいいな。

ちなみに映画は、
「声出していこう、声!」
っていう登坂広臣さんのセリフも印象的でした(観た人はおわかりと思いますが)。
音楽もよかったな~。

・・・と、いつもの癖で、話が脱線しそうなので、戻しましょう。

この本のサブタイトルは、
「アフリカ・アジア、そして車イスで考えた援助すること・されること」

ご自身が国際協力する立場だった村山さんが、50歳で中途障害者となって車イス生活となり、小さな段差一つ、体の移動1つにまで、人の手を借りなくてはならなくなって見えてきたこと、それが本の後半に、人間愛にあふれるあたたかい視点とともに、理系の明晰な分析力によって、ご自身の障害についてだけでなく、日本の障害者運動の流れや、カンボジアでの障害者の現状までが淡々とクールに論じられています。

その両方の視点があるからこそ、読者は、様々な事実を把握しながら読み進め、村山さんと一緒に障害のある人たちのことを、いえ、その境界を越えて、自らのありかたを考えられるようになっています。

わかりやすく、語りかけるように書かれていながらも、深く読み応えのある本で、読了後も、いろいろ考えさせられました。

恒例の、本の集合写真は、かもがわ出版トリオで、パチリ!

世界を知るシリーズの「パレスチナの小さないとなみ」の著者高橋美香さんは、「アフリカから、あなたに伝えたいこと」を姉妹本と呼んでくださり、村山哲也さんも、姉弟本と呼んでくださっていて、本の方でもファミリーが増えているみたいでうれしいです!

村山さん、ご出版おめでとうございます!!

みなさんも、ぜひ読んでみてください。

                           島岡由美子

「超えてみようよ!境界線 
アフリカ・アジア、そして車イスで考えた援助すること・されること」

村山哲也著 
かもがわ出版
本体価格2000円 税込み2200円
2021年1月24日発行

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