トロワ・タンザニアからのTANZANIA便り

*この便りはトロワ・タンザニアのMUNAWAR(島岡由美子)さんからのものです。
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便り65 「モーリシャス国際柔道大会2004」(2004.4.10)
便り66 「NHK 遠くにありてにっぽん人−我が志はアフリカにあり 予告篇」(2004.6.3)


便り65 「モーリシャス国際柔道大会2004」(2004.4.10)


ジャンボ!日本は春ですね。
アフリカフェフレンドの皆さんは、それぞれどんな春をお過ごしでしょうか。
ザンジバルは、本格的に雨季に入り、ここのところ連日雨が降っています。去年、おととしと2年連続雨不足で、作物の不作が続いているので、今年こそ大いに降ってほしいと願っているところです。

さて、私たちタンザニア柔道チームは、3月9日から20日まで、オリンピック選考会の1つであるモーリシャス国際柔道大会とトレーニングキャンプのため、モーリシャスに行ってきました。選手は、昨年秋に大阪で開かれた世界選手権大会と同様、60kg以下級のアリ・ジュマと73k以下級のハマディ・シャーメの2人。

今年は国際大会初出場の昨年とは違って(昨年の様子は、便り58をご覧ください)、去年の遠征に次ぐ遠征でいろいろ経験を積んだことによって、選手達も自信をつけており、本気でメダルを狙って、モーリシャスへ向かいました。とはいえ、出場したどの国も、オリンピックの出場枠をかけてポイントを取りにきていたので、大会参加メンバーは昨年のオールアフリカゲームの上位選手が勢ぞろいし、熾烈な戦いとなりました。

60kg級のアリ・ジュマは、一回戦3位に入った選手と戦って敗退。
敗者復活戦では、開始早々、相手を内股で高々と舞い上げ、一本勝ち。
そして、問題の次の試合、相手はモーリシャス。これに勝てば3位決定戦に出られたのですが、初めにアリ・ジュマが絞めて、相手が参ったをしたにもかかわらず、レフリーが見ていないと試合を続行。その後、再び内股で、高く舞い上げたにもかかわらず、あろうことか、相手に有効ポイントがつき、そのままアリ・ジュマの優勢負けになってしまいました。

73kg級のハマディ・シャーメは、3位に入った選手とよく戦い、初めに有効ポイントを取ったのですが、その後、技を返されたときに足首を傷め、試合が続行できず、棄権負けとなってしまいました。

審判に文句をつけるのはいいことではありませんが、どう見ても、モーリシャスの審判は、地元びいきが激しく、今年はオリンピック選考会もかねていたせいか、去年よりさらにそれが激しかったように感じました。



島岡コーチは、初めから「モーリシャス国際で勝つためには、審判をあてにしない完全な一本で勝つしかない」と選手たちに言い聞かせていたので、アリ・ジュマの試合の際も、クレームをつけませんでしたが、他のチームは、審判やオフィシャルにクレームをつけることしばしば。

どう見ても、「有効」以下でしょうと思われる技で「一本」をとられて負けたナイジェリアの選手は、呆然とした後、うずくまってさめざめと泣き出し、勝者が礼をして退場した後も、畳を降りずに泣いているので、他の選手に抱きかかえられて退場する一方、ナイジェリアのコーチは、はやし立てる観客相手に激怒して、「今度モーリシャスがナイジェリアに来たら、こてんこてんにしてやる!」と大見得を切る一幕もありました。

南アフリカの選手も、審判のミスかオフィシャルミスか、有効ポイントが逆につけられており、いったん南アフリカ側が負けを宣告されたのですが、試合が終わったあとで、コーチからクレームがつき、協議の結果、判定が覆るという一幕も。勝って畳を下りて控え室で大喜びしていたセーシェルの選手は、再び試合場に呼び戻された挙句に、次は負けを言い渡されたので、これまた呆然。

昨年末に、ザンジバルでおこなわれた柔道コーチングコースで、菅波氏が言われた
「皆さんが、一生懸命試合のためにがんばってきて、自分が思う存分力を出して絶対に決めたと思った技を、審判のミスで相手の勝ちにされてしまったら、どう思いますか?
審判とは、自分のためにやるのではなく、目の前の選手のために、責任感を持って、細心の注意を払い、全力を尽くしてやるものなのです」

という言葉が、実感として強く思い出されました。

とはいうものの、試合後の合同キャンプは、若い柔道家同士、勝ち負けにこだわらず、互いに技を磨きあいました。

ところで、ここモーリシャスは、インド洋の西方、アフリカ東端のマダガスカル島からさらに約900キロも東。南回帰線近くに位置し、大きさは東京都ほど。1300万年ほど前、海底噴火の隆起によってできたと考えられている火山島。



街に立つビルの合間からは、必ず緑多きなだらかな山が見え、ほんの少しでも郊外に出れば、ひたすらサトウキビ畑が広がり、海岸沿いは、青い空と海が広がる欧米人向けのリゾート地。その地理的条件や経済的発展、そして美しい自然から、「インド洋の貴婦人」と呼ばれる美しい島です。

今年は、柔道場まで、バスで吹っ飛ばして片道1時間半という、島の北端にあるペレベレ地区のホテル(モーリシャス柔道連盟指定)に泊まっていたので、 毎日行きと帰りに島の北端から、真っ青な海をながめ、わさわさと風に吹かれるサトウキビ畑をながめ、ビルが林立するポートルイスの中心街をながめながら、柔道場とホテルの往復を繰り返していました。

このなだらかな山と、広がる緑多き風景は、昨年初めて見たときから、なんだか見たことのあるような、懐かしさを感じていたのですが、今年、毎日の往復で、その風景は、私の心の中にある「ムーミン谷」のイメージにぴったりだったということに気がつき、そのとき以来、サトウキビ畑の向こうに見える山を「モーリシャスのおさびし山」と呼ぶことにしました。

「ムーミン」は、雪深い北欧で生まれたお話ですから、インド洋に浮かぶ南国のモーリシャスでムーミン谷を連想するのは少々変かもしれませんが・・・。

さて、ここモーリシャスは、サトウキビが国の重要な産物で、サトウキビから砂糖はもちろん、糖分を搾り取った幹や葉の部分を利用して、建築資材用の板を作るほか、火力発電の資源として使われているそうです。この話、バスで移動中に、モーリシャスのコーチから聞いたのですが、
「砂糖に加工するところまでは想像できても、絞りかすをさらに板や、火力発電に利用するところまでは想像できなかった!!」
と、アリ・ジュマが大いに驚き、
「ザンジバルでは、サトウキビジュースを飲んだら、絞ったかすは、捨ててしまうので、ずいぶんもったいないことしているんだなあ」
と言っていましたが、その後に、

「でも、そのかわり、ザンジバルでは、ココナッツの実、果肉、葉っぱ、幹、・・・全部を活用しているから、ココナッツは捨てるとこなしだけどね」
とお国自慢の言葉が続きました。

ここモーリシャスにも、現地語はあるにはあるのですが、フランス人をはじめ欧米人のリゾート地として整っている国らしく、どこもかしこもフランス語一辺倒でした(柔道大会の場内アナウンスもフランス語のみ)。

ということで、今年も、青い空と海、サトウキビ畑とフランス語の島モーリシャスから、同じくインド洋に浮かぶ青い空と海、ココナッツ林とスワヒリ語の島、ザンジバルに無事帰り、「ボンジュール」から、「ジャンボ!」になって、ほっとしました。

ところで、モーリシャスでは、昨年、インド洋に浮かぶフランス語圏の島で4年に一度、開かれる国際スポーツ大会の開催国になったとかで、柔道場が新たに改築され、去年に比べてぐっと立派になっていました。

このインド洋国際スポーツ大会のキャラクターがイルカだったらしく、町のあちこちに、サッカー、バレー、バスケット、卓球、・・・といったそれぞれのスポーツのユニフォームを着たイルカのポスターが貼られており、道場にも、柔道着を着て、黒帯を締めたイルカ君の姿が描かれていて、思わず笑みがこぼれました。

イルカといえば、ザンジバルの近海では、このところ、イルカの大群が出没。しかも、漁船が網を下ろしている最中に大群でやってきて魚を散らしてしまうという悪行を続けていました。イルカがかわいいなんて悠長なことは、ザンジバルの漁師界では言っていられません。

イルカは漁師の天敵、「イルカなんて、どっか行っちまえー!」というのが、漁師たちの本音です。

モーリシャスの道場で見たイルカの柔道着姿、かわいかったなあと思いながらザンジバルに帰ってきたら、すぐにそんな話題になったので、将来、ザンジバルで、国際柔道大会を催すことがあっても、柔道のキャラクターにイルカを使うのはよそう!と思ったことでした。

それでは、今日はこの辺で。

皆様の健康と活躍を、ザンジバルの真っ青な空の下よりお祈り申し上げます。
GOOD LUCK!!
ムナワルこと 島岡由美子


便り66 「NHK 遠くにありてにっぽん人−我が志はアフリカにあり 予告篇」(2004.6.3)

ジャンボ!皆さん、お元気ですか?
ザンジバルは雨季も明け、毎日真っ青な空が広がっています。

さて、私たちの方は、4月15日より約4週間、NHKテレビ「遠くにありてにっぽん人」の撮影隊の皆さんを迎えていました。

仕事の場が圧倒的に足りないアフリカで、人々が自活できるよう、働く場を作り、援助に頼らない真の独立をめざすという「アフリカ独立革命」を志に掲げる島岡強の生き方を伝えるドキュメンタリーを作りたいという依頼を受け、この番組に出演することを決めました。

取材内容は、拙著「我が志アフリカにあり」をベースに、柔道では、青空道場時代からザンジバル武道館建設以降、現在に至るまでの軌跡をカメラで追い、タンザニア国内恒例の無差別級柔道大会であるエンバシー・ドクター・カップ(4月17日)の模様や、日頃の練習風景、アテネ・オリンピック最終選考会であるアフリカ柔道選手権大会(5月3日―10日 チュニジアにて)。

漁関係では、カクメイジ号での漁、木造船作り風景、そのほか、4月27日に行われたザンジバルとタンガニーカ本土が連合し「タンザニア連合共和国」になって40周年目の記念式典の様子、世界遺産にも指定されているストーンタウンやさんご礁の海、白く続く美しい砂浜、数々の遺跡も含めたザンジバルらしい風景に加えて、庶民が集まる市場や港の風景など、私たちが暮らしている、そのままのザンジバルが紹介されます。

また、今回は、原材料のコーヒー豆ではなく、インスタントコーヒーとして加工されたタンザニアの完全製品であるアフリカフェの輸出によってタンザニア経済を興していこうという主旨で行われているアフリカフェプロジェクトのことも紹介される予定です。

「遠くにありてにっぽん人」撮影隊は、制作会社クリエイティブ ネクサスのディレクター・佐藤知樹さん、技術会社マイシャより カメラマン・吉本順一さんと音声・渡辺一誠さんの3人。文字どおり、朝から晩までの密着取材でしたが、この約4週間に渡るロケ中、回したテープは75本(1本40分)。これはカメラマン歴22年の大ベテラン、吉本さんにとっても最高記録だそうです。

単純に考えても、75本で、3,000分。・・・うーん、これを60分に収めるには・・・???といった専門的なことは、クリエイティブ ネクサスとNHKの皆々様にお任せするとして、どんなドキュメンタリーに仕上がるか、楽しみに待つことにしましょう。私、個人的には、今回の番組で、ザンジバルの夜の漁の様子を見るのが一番楽しみです。カクメイジ号のキャプテン、ヒジャや、漁師たちのかっこいいところが見られるかな?(いつも彼らが陸に上がって、ごろごろしている姿しか見ていないので)

「遠くにありてにっぽん人―我が志はアフリカにあり―タンザニア・島岡強」
の放送予定日は、以下のとおりです。
NHK BS2で、6月19日 土曜日 午後9:30〜10:30
NHK BShi(ハイビジョン放送)で、6月20日 日曜日 午後10:00〜11:00


私が日本にいた頃は、NHK総合と教育しかなかったので、今回、NHKはNHKでも、ハイビジョンとかBS2などがあるということを初めて知ったのですが、皆さん、お間違いのないようチャンネルを合わせてくださいね。なお、放送予定変更の可能性は、前日まであるそうなので、当日は、新聞のテレビ欄でお確かめください。

4月にザンジバルで行われたエンバシー・ドクター・カップの模様や、5月のチュニジア遠征の様子は、「遠くにありてにっぽん人」の中で放映されるので、まずはそれをお楽しみに。私から試合結果をお知らせするのは、テレビ放映が終わってからにしますね。

ということで、NHK「遠くにありてにっぽん人―我が志は、アフリカにあり―タンザニア 島岡強」が最高のドキュメンタリーとなって放映され、島岡強の志とは、そして、彼の言う真のアフリカ独立革命とは、・・・が、皆さんの心に伝わること、そして、アフリカフェの故郷であるタンザニアという国を、身近に感じていただければいいなと願っています。

私たちは、放映日も、ザンジバルにいるため、オンタイムで番組を観ることができないので、テレビをご覧になったら、番組の内容やご感想など、ぜひ教えてくださいね。楽しみにしています。

それでは、今日はこのへんで。
皆様のご健康とご幸福を、ザンジバルの真っ青な空の下より、お祈り申しあげます。
GOOD LUCK!!

ムナワルこと 島岡由美子拝




NO.1「ジャンボ!」(2000.4.15)
NO.2「タンザニアのゴールデンウィークは大雨期の真っ最中」(2000.5.10)
NO.3 「ジャンボ、ベイビー! (こんにちは、赤ちゃん)」(2000.5.18)
NO.4「カンガ(布)は語る」(2000.5.25)
NO.5 「日本はぼた餅、タンザニアはタコとサメ!」(2000.6.12)
NO.6「リズム感のルーツは子守唄にあり」(2000.6.28)
NO.7「日本は七夕、タンザニアはサバサバ!」(2000.7.11)
NO.8「アフリカフェの故郷ブコバ」(2000.7.16)
NO.9「アフリカフェの生みの親、TANICA社」(2000.7.16)
NO.10「コーヒーに最適な土地、ブコバ」(2000.7.18)
NO.11「ブコバでは、無農薬が当たり前」(2000.7.18)
NO.12「恐怖のこうもり男」(2000.7.18)
NO.13「小規模だからこそできる有機農業」(2000.9.11)
NO.14「オリンピックって何?」(2000.9.27)
NO.15「タンザニア式炭焼きケーキ」(2000.10.8)
NO.16「自然と人間のハーモニー」(2000.10.19)
NO.17 アロマティックライフの勧め (2000.11.1)
No.18 アフリカフェ・アロマの秘密(2000.11.11)
NO.19「続アロマティックライフの勧め」(2000.11.21)
No.20 「ラマダーン風景」(2000.12.11)
No.21「ラマダーン、明けましておめでとう」(2001.1.11)
No.22「バブが語る昔のコーヒー事情」(2001.2.4)
No.23「コーヒー愛飲歴70年、ビビが語る」(2001.2.4)
No.24「セネネ(バッタ)は愛の証」(2001.2.17)
No.25「バナナ酒ルビシ」(2001.3.11)
No.26「びっくりバナナ大賞」(2001.3.18)
No.27「FOODEX JAPAN 2001報告」(2001.4.5)
No.28「JETROブースにて」(2001.4.17)
N0.29「ミスター 2ボトルを偲んで」(2001.5.4)
No.30「平山領事に贈る言葉」(2001.5.17)
No.31「人気テレビ番組は『おしん』」(2001.6.5)
No.32「動物スプーンは、カンバ族伝統の木彫り工芸」(2001.6.17)
No.33「自警団、その名はスングスング」(2001.7.3)
No.34「幻のサバサバ柔道杯2001」(2001.7.17)
No.35 「ブコバのコーヒー農園2001」(2001.8.4)
No.36「バナナ・ア・ラ・カルト」(2001.9.3)
No.37「ブコバ特産、干草製床用カーペット」(2001.9.17)
No.38「ブコバ特製オーガニックスプレーの作り方」(2001.10.3)
No.39「ザンジバルの建設現場風景」(2001.11.3)
No.40「ブコバの珈琲文化 1.ゆでコーヒーの実」(2001.12.3)
No.41「ブコバの珈琲文化2.生活篇」(2002.1.9)
No.42 「タンザニアの薬木代表、ムアルバイネ」(2002.2.3)
No.43「マンゴーを食べよう!」(2002.3.3)
No.44「マンゴーの木に登ろう!」(2002.3.28)
No.45「ザンジバル武道館完成」(2002.4.17)
No.46「ザンジバル武道館落成式」(2002.5.3)
No.47「サファリに行こう!」(2002.5.17)
No.48「コーヒーの脱穀風景」(2002.6.3)
No.49「サバサバに行こう!」(2002.7.20)
No.50「コモンウェルス大会―マンチェスター2002」(2002.8.17)
No.51「コーヒーの友、甘菓子ベスト3」(2002.10.19)
No.52 「続 コーヒーの友―甘菓子ベスト3」(2002.11.17)
No.53 「コーヒー農家の喜び(ハリディ親子に聞きました)」(2002.12.19)
No.54 「ブコバの珈琲文化3.兄弟仁義」(2003.1.3)
No.55
「名もなき果実、パイナップル!」
(2003.2.3)
No.56「エンバシードクター柔道杯2003」(2003.4.4)
No.57 「ザンジバル ヤングスターズ 柔道杯2003」 (2003.5.6)
No.58 「モーリシャス国際柔道大会」 (2003.6.3)
No.59 「サバサバ柔道杯2003」(2003.7.21)
No.60 「ブコバのコーヒー栽培とアグロフォレストリー」(2003.8.5)
No.61「ザンビア&南アフリカ、柔道遠征5週間」(2003.9.9)
No.62「2003大阪世界柔道選手権大会―2003 WORLD JUDO CHAMPIONSHIPS」(2003.10.5)
No.64
「タンザニア体重別柔道選手権2004」(2004.4.10)
No.63 「OS柔道コース in タンザニア」(2004.1.13)


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