ティンガティンガアートの中でのシャターニ画というと、エルメスのスカーフにもなったリランガが有名ですが、実は、このサユキ(SAYUKI)もシャターニ画を描いて20年以上。知る人ぞ知る存在でした。
男のシャターニだけではなく、女シャターニも登場したり、サユキの生まれ育った村の風習を絵の中に取り入れた生活画のようなシャターニ画だったり、輪郭線を黒で描かない代わりに、バックグラウンド(背景)の色を初めから残しておいて輪郭にしたりするというのは、サユキの独特の手法です。
そして、切り絵を連想させる、細やかできっちりした線が美しい模様と色遣い。
そして、タンザニアから発信されるティンガティンガアートなのに、なぜか日本的。
そのわけは、日本画で昔から使われる青海波の模様にあったようです。
今年の5月に名古屋で開催したティンガティンガ原画展にお越しくださった日本画の先生が、
「あっ、やっぱり、ここにも」
とつぶやきながら、サユキのシャターニ画をじっくり眺めておられました。
そして、私に、
「この人は、日本に来たことがあるのですか?」
と尋ねられたのです。
それは、サユキのシャターニ画の中に、必ずと言っていいほど、日本画で使われる青海波が描かれていたからだったのですが、
「なぜこの模様を知っているのか不思議ですね」
「タンザニアにも海があるので、その海の波からこのような発想になったのでしょうか」
「やはり、世界のアーティストは、国境や時代を超えて、同じような発想を持つのでしょうか」
といったお話をしました。
青海波の謎はどこから?・・・いつもなら、タンザニアに帰ってすぐにサユキに聞くことができたのですが、実は展示会前の3月に急逝。48歳でした。
今になっては、もう、サユキの青海波の模様は、どこからきたのか、聞くことはできません。
ただ、ユーモラスなシャターニ画の中に必ずと言っていいほど登場する日本と共通の青海波の模様を眺めているだけです。
私がサユキのシャターニ画に出会ったのは、ユーモラスな色とりどりの女のシャターニ達が、大鍋にぐつぐつ、ぐつぐつ煮ものをして、楽しそうに語らっている小さな作品でした。
ちょっぴり心配なことがあった時期だったのですが、どこにも力の入っていないようなポレポレした雰囲気のシャターニ達が、無理にがんばらなくっていいいんだよ、そのうちいいことあるからさと言ってくれているような気がして、一目で好きになってしまいました。
そして、大鍋でぐつぐつ煮ているものが、人々の病気を治してくれる薬に見えてきたので、日本で病に伏せっていた友人に贈りました。
友人もたいそう気にいって、シャターニ達を眺めて、大いに楽しんでくれたようです。
サユキの息子が、サユキが最後に入院する前に描いていて、自分の田舎の方に送っていたという作品を持ってきてくれました。
それらは、私が、最後にリクエストした「笑うシャターニ」シリーズでした。
ユーモラスでかわいい男女のシャターニ達の中に、必ず、二カッっと笑いながら私を見ているシャターニがいて、
「どうだい、このシャターニ達、面倒だったけど、リクエスト通りに描いてみたよ。笑うシャターニなんて、受けるかどうかわかんないけどな」
と言っているサユキの気持ちが伝わってくるようで、胸が熱くなりました。
サユキ、素敵なシャターニ画をありがとう。
サユキは亡くなったけれど、とってもポレポレっとした、ユーモラスでかわいく、人々に笑顔を運んでくれるシャターニ画をたくさん遺してくれました。
ユーモラスだけではなく、すみからすみまで実に精密で、サユキの20年以上描きつづけたシャターニ画の集大成が、最後の半年ほどの作品に凝縮されているのではと思えるほどの出来栄えです。
サユキのシャターニ画、これからも、1点1点大切に、展示販売していきたいと思います。
皆さん、タンザニアには、サユキという名前のティンガティンガアーティスト(男性)がいて、生涯シャターニ画を描き続けていたことを覚えていてくださいね。
バラカタンザニア by島岡由美子
「シャターニ画の遣い手、サユキ(Sayuki)の思い出と青海波」への7件のフィードバック
サユキの素敵な絵を見ることができました。
ありがとう。
私にとって、サユキというアーティストの名前は、生涯忘れられないものとなりました。
☆kabacoさん、ジャンボ!
サユキのこと、サユキの絵のこと、心に刻んでいただけてうれしいです。
こちらこそ、ありがとうございます。
サユキさんのシャターニ画に登場する、青海波
確かに、着物にも、たくさん登場します。
そのなぞは、私にもとても興味深いものですが
今となっては、なぞのままなのですね。
色鮮やかで、さまざまな色の色使いも
日本画(着物柄)に通じるものがあって、
見ているとほっとしますね。
☆こはるさん、ジャンボ!
あっそうか、着物にも、青海波の模様がいっぱい登場するんですね。
>色鮮やかで、さまざまな色の色使いも
>日本画(着物柄)に通じるものがあって、
>見ているとほっとしますね。
↓
そうなんですよ。
なぜか、私も、サユキの絵を見た時に、カラフルなんだけどほっとするものを感じたんです。
後になって思えば、それは、日本柄、着物柄、つまりは、和の雰囲気があったからなんですね。
シャターニ達が巻いている布の柄も、アフリカっぽいけど、意外と日本的だったりして、サユキの絵は見飽きることがありません。
サユキの絵の中にある青海波の謎は、これからもずっと謎のままというのは、不思議なサユキのシャターニ画らしくていいかもしれません☆
☆でみさん、ジャンボ!
拍手コメントにて、サユキへの優しいメッセージをありがとうございます。
そうですね。サユキは亡くなってしまったけれど、サユキの作品に会うことができますよね。
サユキも、それを望みながら、最後まで筆をとり、描き遺してくれたのだと思います。
バラカさんジャンボ!
バラカさんのお話を読みながらサユキさんの絵を拝見していると、一層絵に愛着が湧く気がします。
青海波の模様を描いたサユキさんの意図が分からないままであるミステリアスさも絵の価値を上げている気もします。
私はデフォルメされた横顔の鼻と口がとっても好きです。
☆ジュマさん、ジャンボ!
サユキの絵に愛着を感じてくださり、うれしいです。
>青海波の模様を描いたサユキさんの意図が分からないままであるミステリアスさも絵の価値を上げている気もします。
↓
なるほど、そう考えていただけてうれしいです。
SAYUKIも、喜んでいると思います。
>私はデフォルメされた横顔の鼻と口がとっても好きです。
↓
この鼻と口、いったいどうなっているのか、微妙で不思議なデフォルメの仕方ですよね。
このシャターニ達って、どんな声で話しているのかなと考えるのもまた楽しいです。