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【カネト~炎のアイヌ魂】を読んで、タンザン鉄道を思う

ジャンボ!2015年も8月に入りましたが、いかがお過ごしですか?
【ブルームーン2015】

2015年7月31日、いつものように、柔道の練習が終わって、ザンジバル武道館の外に出ると、美しい満月が見えました。
みなさんのお住まいの場所からも、見えていたでしょうか。

こういう風景を共有するとき、地球は1つ、お月様も1つと実感します。
カネト~炎のアイヌ魂】を読んで、タンザン鉄道を思う
夏休みは、読書の季節でもありますが、みなさんは、どんな本を読んでいらっしゃいますか?
私は、最近になって、友人が紹介してくれた、【カネト~炎のアイヌ魂】 を読みました。
第八代上川アイヌ酋長川村カネト氏が、当時、測量技手の誰もがしり込みした天竜川渓谷を含む国鉄飯田線沿いの測量をやってのけ、その後飯田線の建設にも命を懸けて尽力した、事実に基づいた児童文学のノンフィクションに、とても感動しました。

  【飯田線ってどこにあるの?】
私は愛知出身なので、中央線や東海道本線にはなじみがありますが、その二つをつなぐ飯田線の場所がどこなのか、わかっていませんでした。
豊橋(愛知県豊橋市)~辰野(静岡県上伊那郡)をつなぐ路線だったのですね。   
ちょうど、今年の5月に、恒例の名古屋でのティンガティンガ展の後、初めて三河安城展を開催することになって、愛知県の地図をあらためてみなおしたばかりでしたし、会期中には静岡の湖西市からのお客様もいらっしゃったりして、東海の地図を見たばかりだったので、本に出てくる地名が、頭の中で大体の地図と一致しながら読み進めることができました。
【自然の脅威の中での 測量と工事】
イノシシ、サル、マムシなどの野生動物や崖、山、深い森といった野生の脅威と戦いながら、シャモ(日本人)の技手が誰もがしり込みした、歩く道もない険しい天竜峡谷と岩盤がもろいという劣悪な条件の中での測量をやってのけ、その後も現場監督として飯田線開通に尽力したアイヌ民の川村カネト氏の足跡が、丹念に描かれています。
【アイヌ差別の中で】
アイヌ差別の真っただ中の時代、アイヌ民の誇りをもって生き抜いた川村カネト氏の生きる姿勢に感動しました。        
中でも、アイヌの現場監督に使われるのがしゃくでたまらない作業員たちに、カネト氏が袋叩きにあい、穴に放り込まれて、コンクリートで生き埋めにされそうになる場面でのカネト氏の毅然とした態度に胸を打たれました。
 
【生きているということは、仕事に誇りを持つこと】
カネト氏は、このとき、自分を殺そうとしている男たちにむかって、一切の命乞いをせずに、こう言ったのです。ちょっと長いけれど、本文そのまま引用します。          
「いいか、おれは、コンクリートをうたれれば、これで死ぬ。
おれは死んでもいい。北海道にいるときも、ここに来てからも測量という仕事に男をかけてきた。からだをはってきたんだ。
おれは、おれの仕事に誇りを持っていきてきた。だから、おれはいつ死んでもいい。殺したければ、殺せばいい。                
  
だが、いっておくが、おれを殺したからといって、アイヌ魂までも殺したと思うのはまちがいだ。
アイヌをさげすむおまえたちは、いったい、なにをしてきたのか。おまえたちのようないい加減な気持ちで生きていても、それは生きているということにはならない。
生きているということは、仕事に誇りを持つということだ。
わたしを殺しても、かくしとおすことはできない。おまえたちも、このままではすまなくなる。                            
なあ、おまえたちも誇りを持ってトンネル工事を続けようじゃないか。
それとも、アイヌを殺して、それが誇りだというのなら、さあ、早くコンクリートをこのあなにぶちこむがいい」
(【カネト~炎のアイヌ魂】P160~P161)

 
【ルポルタージュ】
巻末には、カネト氏の功績が、日本の鉄道史の裏に隠れたままになっていたのを、当時、保線マンだった本田さんという人が、偶然「三信鉄道建設概要」の中に、
北海道旭川から来たアイヌ測量版画、測量や建設に活躍したという文章が、数行書かれていたのを見つけて歴史をたどったことがきっかけとなって、28年ぶりにカネト氏が、北海道から飯田線のある天竜峡に行くくだりが、ルポルタージュとして書かれています。
 
【3年かかって歴史を掘り起こした筆者澤田氏の思い】
その後に、著者である澤田猛氏が「あとがき」として、この本田氏から話を聞いたことが、この本を書くきっかけになり、そこから3年かかって、歴史を掘り起こしてこの本を書きあげたことが書かれていました。
 
【現在もなくてはならない存在の飯田線】
本の存在を教えてくれた友人は、この飯田線利用者でもあり、彼女によると、飯田線は、たとえ本数は少なくても、地元の人にはなくてはならない路線だそうです。
また、地下鉄飯田線と呼ばれるほど、トンネルが多い場所もあるそうです。
ということは、それだけ山がちで、測量も、鉄道を敷く工事の時もどれほどの苦労があったかということですね。 
この本を読んで、私は、タンザニアのタンザン鉄道のことをたくさん思い浮かべました。
【タンザニアーザンビアを結ぶ、タンザン鉄道】
タンザニアにも、タンザン鉄道と呼ばれる、タンザニアとザンビアをつなぐ鉄道が敷かれています。
おんぼろになった列車が問題ではありますが、なくてはならない路線として、今でも多くの人々に利用されています。

タンザニアの鉄道のことまで書くと、長くなってしまうので、次の記事で続きを書きます。
忘れないように、1枚だけ、タンザン鉄道の写真をつけておきますね。
皆さんにとって、身近な路線は、どこでしょうか?
(私は、日本の路線では、東海道本線、中央線と、うんとローカルなところでは、名鉄瀬戸線です)
             島岡由美子
8月6日追記 
この続きは、続☆【カネト~炎のアイヌ魂】を読んで、タンザン鉄道を思う
 に書きました。
 
おすすめ児童書ノンフィクション
☆カネト~炎のアイヌ魂 沢田猛著 ひくまの出版
絶版になってましたが、アマゾンで、中古本を、買うことができました。
全国学校図書館協議会選定図書にもなっていたので、図書館にもあると思います。
小学校5年生の教科書でも紹介されているようです。

「【カネト~炎のアイヌ魂】を読んで、タンザン鉄道を思う」への2件のフィードバック

  1. baraka_tanzania

    ★★さん、はじめまして。
    拍手コメントありがとうございます。
    飯田線沿線にお住まいなのですね。
    カネトは、児童書ですが、昨年、「飯田線ものがたり」という本が出版されました(著者は、太田朋子さん)より詳しく飯田線、カネトさんのことも含めて書かれていて感動しました。お勧めの本です。
     ・・・・・・・・・・・
    >飯田線沿線の山中に来て20数年が経過しましたがコノお話しは今まで知りませんでした。

  2. baraka_tanzania

    本について、補足します。
    「飯田線ものがたり: 川村カネトがつないだレールに乗って」
    著者 太田朋子/神林靖子
    新評論   2017年7月出版
    著者の太田朋子さんは、児童書カネトが絶版になってることを知り、人々にこの事実を知らせたいという思いで、歴史をひもとき調べながら本を書かれたそうです。

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