タンザニア便り '01年8月

*この便りはトロワ・タンザニアスタッフのMUNAWARさんより隔週(3日と17日)で送られてきます。
MUNAWARさんはザンジバルに住む30代の女性です。MUNAWARさんへのメールは
こちらまで


便り35 「ブコバのコーヒー農園2001」(2001.8.4)
ジャンボ! 日本は猛暑と聞いていますが、お元気ですか? タンザニアは例年より涼しく、過ごしやすい日々が続いています。
ところで、私たちは7月24日から28日まで、昨年に引き続き、アフリカフェの故郷ブコバの視察旅行に行ってきました。今日は、その様子をお伝えしましょう(写真はコーヒーの実)。
ザンジバルから飛行機を乗り継ぐこと3回、やっとついた小さな小さなブコバ空港は、ビクトリア湖を見渡す素晴らしい眺めの場所にあり、今年もアスファルトなしの赤土のまま、かわいらしく私たちを迎えてくれました。
まずはアフリカフェ製造元タニカ本社訪問、インスタントコーヒー工場見学、最高責任者であるカレガ氏を初め、工場長のイシャンシャ氏、バギラ氏、フェビアン氏・・・たくさんのタニカ社スタッフが、今年もいきいきとした表情で働いていました。
本社訪問の後は、コーヒー農園視察に行きました。タニカ社には、会社が経営している特別な農園はありません。ブコバ地方のコーヒー農園は、家族単位の小規模農園の集合体、アフリカフェは、こういった小規模農家の人々によって栽培されたコーヒー豆で作られているのです。
ブコバでは、どこを車で走っても、ありとあらゆるところにバナナとコーヒーの木が混在して植わっている風景が見られます。コーヒーはとてもデリケートな植物なので、日当たりが強すぎないよう、ある程度の日陰を作ってやることも栽培条件の一つで、たいていどこのコーヒー農園にも、日陰つくり用の木、シェイドツリーが植えられています。シェイドツリーは日陰さえできればいいので、木の種類は土地によってまちまちですが、このブコバ地方では、その役目をバナナが果たしているというわけです(写真はコーヒーの花)。
コーヒーは年に一度の換金作物であり嗜好品、けして食物にはなりえません。ブコバのコーヒー農園では、ブコバ地方の主食であり、シェイドツリーとしてのバナナの他に、数種類の豆、芋、トマト、とうがらしなど、食物となる作物があちこちに植えられています。計画的な大規模プランテーションでは、こんな自由は利かないでしょう。
ここにはトマト、そこにはとうがらし、へちまだ、ヤム芋だとあれこれ植わっているコーヒー農園を見学しながら、こういうのは、いかにも家族単位の小規模農園ならではの光景だなあと思ったことでした。
また、どこの農園を回っても、去年と同じように、エレファントグラスをはじめとする干草や落ち葉が農園いったいに敷かれ、牛小屋から出る草をたっぷり含んだ牛糞を何日か寝かせ、さらに土とよくこねて作った栄養たっぷりの手作り肥料がまかれていました。
これらは、代々農民としてブコバの土地と共に生きてきたハヤ族に伝わる伝統の農業方法で、オーガニック時代到来の現代になって見直され、新たに始められた有機農法ではありません。そもそもブコバの人々にとっては、土壌を天然の堆肥から作るとか、農薬、化学肥料を一切使わないというのはごく当たり前のことで、親から習ったとおりの生活をそのまま続けているにすぎないのです。
ムシュルドさんとの懐かしい再会もありました。ムシュルドさんは、去年たまたま私たちが車で通りかかったときに、道端でせっせと草刈りをしていた方で、その場で話しかけ、農園を見せていただいたのですが、その時は、しょっぱなに、大切な牝牛が子供を2頭残して死んでしまったばかりで、世話が大変だという話で始まったので、少々面食らった思い出がありました(写真は収穫風景)。
そのムシュルドさんと、今年もまたもや道でばったりという嬉しい偶然に遭遇。せっかくお会いできたのだから、今年も農園を見せてくださいとお願いすると、「カリブ サーナ(Very welcome)」と快諾してくださった後は、やっぱりすぐに牛の話になり、あの時残った2頭のうち1頭は死んでしまったけれど、もう1頭は元気に育っていると言いながら、まず、コーヒー農園の中にある牛小屋に案内してくださいました。
元気に育っている子牛を見ていたら、去年のムシュルドさんの言葉を思い出しました。
「コーヒーは、手がかかるけど、年に一度の大切な現金収入源だから、大事にしないとな。牛小屋から出る、糞混じりの土も、コーヒーの好物だよ。俺は息子に、『コーヒーのおかげで学校に行かせてもらえるんだから、コーヒーにも好物食わせてやれ』って、毎日学校行く前に、牛小屋の掃除させているんだ。俺も、親からそう言われて育ったからね」
アラワさんの農園では、コーヒーの摘み取りの最中で、小さな子供たちも外に出て、大人たちの作業を楽しそうに見ていました。この農園では、昨年あまり見ることができなかったコーヒーの真っ白い花をたくさん見ることができ、感激しました。
アラワさんによると、花が終わった後、実がふくらみ始める段階が、一番虫が発生しやすい時期なので、こまめな点検が必要とのこと。アラワさんは、40種類の病気に効くと言われ、ムアルバイネと呼ばれる木やマルクという木の実や葉をつぶした汁で、害虫に対抗しているそうです。
昨年もお会いしたイシェンゴマさんの農園では、パパイヤの葉、ジャロトファという植物の実と葉、たばこの葉、牛の尿で作る自家製害虫退治薬の作り方を伝授していただきました。これにムアルバイネなど他の薬草を加えてもいいけれど、とにかく牛の尿を1週間以上寝かしてから、他のものと混ぜ合わせることがコツだそうです。「これは、害虫退治、害虫防止以外に、この牛の尿のおかげで、木を強くするという1撒きで3つもいいことがある最高のオーガニックスプレーさ」と胸を張って教えてくださった後で、今年も
「農薬なんか使ったら、害虫だけでなく益虫まで死に、悪い草だけでなく、使い手のある大切な草まで生えなくなってしまうんだ。そんなことをしてブコバの土地を台無しにしたら、死んだ親父に申し訳ないよ」
という言葉を繰り返しながら、特性オーガニックスプレーをコーヒーの木に撒いていました。
去年はまだ小さかった長男のアルバート君も、小学校に上がっていました。毎朝父親のイシェンゴマさんが長靴を取り出せば、アルバート君も後について、小さな長靴を履いて家畜の世話に出、どの牛があまり草を食べていないかなどを、ちゃんとお父さんに報告するそうです。
イシェンゴマさんの農園には、今は亡きお父さんやおじいさんのお墓があります。「この農園には祖父の魂、父の魂が宿っている。私もいつかこの土に還るだろう。土地を耕し、牛を飼い、作物を育て、そしていつか自分もその土の下に眠る、それが我々ブコバの農民のライフそのものだから。私が父からこの土地を受け継いだように、私の後には息子のアルバートがこのコーヒー農園を守り、ブコバの土地を守ってくれるだろう」
イシェンゴマさんの力強い言葉を聞いて、今年もやっぱりブコバに来てよかったなあと心から思いました。
ブコバでは、今年もアフリカフェを支えるたくさんの人たちが、いろいろな形でコーヒーに関わりながら暮らしていました。日本に渡ったアフリカフェも、デリケートな小さなコーヒーの木だった頃から、大切に慈しみながら育てくれた農家の人々や、アフリカフェという世界に通じる立派な製品にして送り出してくれたタニカ社の人々のことを、なつかしく思い出していることでしょう。
ということで、今日はアフリカフェの故郷ブコバの様子をお伝えしました。
それでは次回のお便りまでお元気で、GOOD LUCK!!
BY MUNAWAR


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