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ザンジバル野球チーム、初のケニア遠征で、なんと初優勝!

ケニア野球連盟から、ケニアで20年以上開催されている Baseball For Africa National Annual Championshipという野球大会への招待状が舞い込みました。

それを知って、選手達は大喜びで、「一回戦突破!」を目標に、チーム編成をしてケニアに乗り込み、7月27&28日に、ナイロビ郊外のジョモケニアッタ大学構内にある野球場で開催された大会に出場し、なんとなんと、初優勝を飾ることができました!!

<ナイロビ@ケニアは寒い!>

ザンジバルチームは7/24に船でザンジバルからダルエスサラームに向かい、夜のバスで翌日の午後ナイロビ着。
ナイロビは赤道に近いのですが、標高が1,800mあり、1年中20〜25度の気温で、世界一過ごし易い首都と言われています。高地のため、涼しく(今の時期は冬なので、夜は布団と毛布が必要なほど寒い!)やや空気が薄いので、標高0mの常夏の島ザンジバルから到着した日と翌日で身体を慣らしてから試合に臨みました。
 大会前日は、広々とした大学にある野球場を思う存分使って、ケニア在住ながら、ザンジバルに何度も来てご指導くださっている老川さんの元で苦手な盗塁やリード、牽制どのシュミレーションをしました。

練習後、ケニアの野球人も一緒に、パチリ


 <大会初日7月27日>
 ザンジバルを入れてケニア各地の10チームでのトーナメント戦が始まりました。

東アフリカ各国のから人が集まっているケニアだけあって、ウガンダや南スーダンから働きに来たり大学生として学んでいる選手たちも混じっていました。


 さて、大会初日、1回戦、ザンジバルは初回3点を奪われ、追う形になりましたが、2回表に6点を取り、その後を何とか抑えて7ー4で勝利。
最大の目標だった初戦突破にチームが俄然燃えました。


続く2回選(準決勝)

この試合は投手戦となり、ザンジバルは相手ピッチャーの変化球に三振の山、
幸い相手のバッターもハキムの球を打てず、0ー0のスコアが続き、
4回表に内野安打からムッサ―がタイムリーヒットを打って1点奪取。
この虎の子の1点を守り切って1ー0で何と決勝進出となりました!

これまでのザンジバルチームは、弱いチームにバカ勝ちをする一方、力が均衡するチームとの接戦を制した事がなかったのですが、ケニアの初戦、2回選とも、最後まで競り合って勝つ事ができました。よくありがちな守備のミスも少なく、声を出し合い、集中力が途切れずにがんばれたのが勝因だったと思います。
この二つの勝利は大きな進歩であり、選手たちにも自信と力がみなぎる中で、翌日の決勝に挑むことができました。

試合が終われば、野球仲間。さっきまで翻弄されていた変化球ピッチャーにアドバイスもらって、熱心にフムフム。

野球歴20年と経験豊富な変化球ピッチャーを囲んで、パチリ!

 <決勝当日7月28日>
相手は、ケニアのリーグ戦覇者で前評判の高かったレッカーズを制して決勝に上がったインフェルノチーム。
決勝戦は、物凄い競り合いになりました。


1回裏、ザンジバルが3点取って先行し2回に6点、3回に2点、4回にも1点取って順調に点を重ね勝ちモードになるも、魔の6回表、インフェルノチームのヒットと味方の凡ミスが重なり、一挙に逆転され12ー11に、いつもなら、ザンジバルチームはここで精神的に建て直すことができず、ずるずると負けてしまうパターンでしたが、この日は最後まで勝負をあきらめず、キャプテンのセレボボ(セカンド)、副キャプテンのムザヒリ(センター)が、内野、外野で声を出してチームを鼓舞。


そうした中、6回裏にザンジバル打線が再び火を吹き4点を取り15ー12とリード。
最終回の7回、初めの打者のセカンドライナーをファインプレーでセレボボが取り1アウト、
その後多少打たれるも何とか1点に凌ぎ15-13で試合終了し、ザンジバルの初優勝となりました。

まさにアウェイの地で
決勝戦では、相手チームのダグアウトには、ケニアの全チームが集まってインフェルノに声援を送り、ザンジバルを応援するのは、補欠3名とコーチのカリームと、老川さんと私たち(島岡強&由美子)しかいない状況で、今までできなかった接戦を競り勝ち、優勝をもぎ取ることができました。

 <老川さんからのメッセージ>
ケニアから何度もザンジバルに足を運んでチームを指導し、このたびのケニアでの大会の機会を作ってくださった老川さんからも、野球人の目線で大会を振り返ってメッセージをいただいたので、ご紹介します。

↓   ↓   ↓

『ザンジバルチームが正々堂々と、文句ない戦いぶりで王者となりました。
チームワークや礼儀/規律はケニアのどのチームよりも優れており、今回はそれに加えて技量と精神面で成長した面も見せてくれました。

3点リードで迎えた最終回、相手の先頭打者が打ったセカンド後方へのハーフライナーをキャプテンのセレボボが必死で追いつき、背面ダイビングキャッチ。
ゲームの流れがザンジバルに大きく傾き、自国のケニアチームに勝ってもらいたいという完全アウェーの聴衆が、一気に静まり返りました。
日本の高校野球でも中々見れないレベルのファインプレーでした。


 今大会は、日頃からケニアの野球振興にも携わっている私として色々な意味で感慨深く、ザンジバルからケニア側が学ぶことは沢山ありました。
 その多くが、彼らが日本や歴代日本人コーチから学んできたことであり、改めて皆さまにお礼を申し上げます。老川武志   』 
                     


<クリーンな大会運営~4部門の大きな大会でした>

 ケニアの大会運営もとてもクリーンでさわやかでしたし、この大会が20年以上続いているというのもすばらしいです。

ザンジバルチームが参加したシニアの部だけ紹介しましたが、女子の部、12歳以下、16歳以下の部と4部門にわかれて競い合われ、閉会式は一同が介してとてもにぎやかでしたし、ケニアの野球の層の厚さを感じました。

ザンジバル野球連盟から、少年の部の選手たちに文房具をプレゼント

そんなこんなで、私たちも、ケニアでの大会に初参加して、学ぶことがとても多かったです。

ケニア野球連盟、大会関係者のみなさまに心よりお礼申し上げます。

延々と続く表彰式の合間に、老川さんとパチリ

<勝て兜の緒を締めろ~祝勝会>
 ザンジバル帰国後、何はともあれ、「初優勝はよくやった!」ということで、祝勝会。

そして食事の前にはしっかり反省点を出し合って、勝って兜の緒を締めました。

 今までのザンジバルチームは、けして力がないわけではないけれど、結果としてタンザニア国内では、優勝に一度も届かず、試合後も不完全燃焼で終わることが多かったですが、ケニアではまさに自分たちの力を出し切り、ピンチのときにも総崩れしないで、自分たちで声がけして立ち直り、チャンスをしっかり生かして勝ち上がったことは、きっと彼らのこれからの人生にも生かされることでしょう。

『ご指導&応援ありがとうございました!!』

そして、2014年のザンジバル野球発足(連盟発足は2015年)以来、今までザンジバル野球の指導をしてくださった上原さん、島田さん、小山さん、座間さん、老川さん。日本での野球交流時に御世話になった長井市、沖縄の皆さま、そして、ザンジバル野球を応援して下さっている皆々様に、心から御礼申し上げます。

キャプテンのセレボボからも、
ザンジバル野球連盟ハッサン会長と、島岡名誉会長からも
ザンジバルチーム全員からも、「応援ありがとうございました!」

そして、皆様とともに、ケニアでの野球大会での優勝を喜びを分かち合いたいと思います。                                  

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野球チームとの喜びの一方で、ケニアでは厳しい現状も垣間見ました。

今大会が開催されたジョモケニアッタ農工大学。広大な敷地に立派な校舎、病院まで完備される中で、大勢の学生が学んでいます。

トラクターが通り、牛舎から出てきた牛たちが野球場を悠々と通って草をはむ姿も。

でも、ケニアも、他のアフリカ諸国同様、若者の人数に対して働く場が少なく、厳しい受験戦争に勝ち進んで国立大学を出ても職にあぶれる若者が多く、卒業後には厳しい現実が待っているそうです。

立派でおしゃれな学食は、リーズナブルな価格

ケニアはこのところ、若者たちが中心となってデモが頻発していて、今回ザンジバルチームがケニアに行った日もデモ決行予告が出ていました。きっと、そのような厳しい現実がデモの背景にあるのでしょう。

ナイロビタウンでは、高いビルがそびえたっているかと思えば、昔からあるシティマーケットの八百屋がほぼなくなって、代わりに土産屋にかわっていたのが驚きでしたが、ぱっと見きれいな公園の芝生やベンチで、昼間から何もしない(仕事がなくて)で時間をつぶすケニアの人々の姿、これは約30年たっても変わらない風景でした。

久々のナイロビタウン、スーツの色が、後のビルとそっくりで笑いました!右側がシティーマーケット

野球優勝の喜びの一報で、やはりアフリカの国々には、働く場がもっともっと必要ということを痛感したケニア遠征になりました。

                                            島岡由美子

☆おまけ写真~カリームコーチの見る夢は

この写真、優勝した夜に、選手から送られてきました。
この日をめざしてがんばってきたカリームコーチ。
きっと最高の夢を見ることができたでしょう。

 

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