写真絵本『 #パレスチナに生きるふたり ママとマハ』を読みました。
この絵本は、ある日突然分離壁が作られ、農地に行くことすら危険な状態になってしまったビリン村のママと、嫁ぎ先の難民ジェニン難民キャンプで、幾度にも及ぶ軍事侵攻に脅かされるマハの二人が主人公。
著者の高橋美香さんは、長い年月、パレスチナの人々と深く関わっておられ、
『パレスチナのちいさないとなみ』『それでもパレスチナに木を植える』などの著書もある写真家。
このママとマハは、高橋さんがパレスチナで長期取材していた時に深くかかわり、家族といえるほどの絆を築いた二人の女性で、二人は会ったことがありません。でも、お二人とも、美香さんを通してそれぞれの存在を知り、と思っている間柄。
パレスチナでママの家に長居している美香さんに、「ミカ、はやくうちにおいでよ」とマハから電話があり、美香さんから電話をかわったマハが、ママに初めましての挨拶をし、互いの日常を伝えあい、いつか会って話したいねという気持ちをもち、あたたかい友情をはぐくんでいく・・・すべて二人の女性の会話形式で綴られる文章と、美香さんが撮影した現地の写真で構成された写真絵本を読み進める中で、パレスチナ問題の不条理と人々が心底求めているものはなんなのかということが浮かび上がってきます。
私は前著の『パレスチナのちいさないとなみ』『それでもパレスチナに木を植える』を読んでいたので、この本の中で美香さんとマハの家族が植えたオリーブの木が大きくなって実をつけていることを知り、とてもうれしくなりました。
そして、そのことが綴られているページでみた、かわいい三人の男の子の写真と、カマールさんは三番目の息子が生まれてやっと、最初につけようとしていた名前をつけることができたというところを読んで涙がでてしまいました。
一人目の子には、亡くなったお父さんの名前イマード (マハの夫で、ある日難民キャンプに侵攻してきたイスラエル軍に暴行され晩年はほぼ寝たきりに・・・)という名前を付け、二番目の子には、殺された幼なじみハムザの名前をつけたから、三人目の子が生まれるまで、最初の子につけようと思っていた名前が付けられなかったという現実を知ったからです。
でも、よろこびの日々は長くは続きません。三人の幼子の父親であるカマールさんも、ある日突然逮捕されてしまいます・・・。
・・・そのような非日常のできごとの連続が、パレスチナの人々の日常なんだと、この写真絵本を手にした私たちは知るのです。
パレスチナといわれても、存在が遠すぎるし、歴史も知らないし、・・・と難しく考えるより、まずはこの写真絵本から読んでみませんか?
パレスチナ問題の発端や歴史、イスラエルとパレスチナはどうあるべきなどと声高に語られることのない、パレスチナに生きる女性同士の日常会話と写真の中から、きっと、新しく知ること、そして、想像するなかで考えることがたくさん出てくるでしょう。
またこれは写真絵本なので、子どもから大人まで広い世代で読めるのがいいですね。
この写真絵本を身近なお子さんたちと一緒に読んでみてはいかがでしょうか。
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