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第3回東アフリカ柔道選手権大会ザンジバル2009

ご無沙汰しているうちに3月も後半になりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今日は、3月22日&23日にザンジバルで開催した第3回東アフリカ柔道選手権大会(The 3rd East Africa Judo Championship Zanzibar 2009)についてお伝えします。
 去年ブルンジで開催された第2回東アフリカ柔道大会で、ザンジバルチームは金5個、銀1個、銅2個のメダルを奪取して優勝国となったため、今回は、地元開催のディフェンデェングチャンピオンとして、去年以上の成績を収めようという大きなプレッシャーの中での大会となりました。

参加国はケニア、18人、ブルンジ31人、タンザニア本土14人、ルワンダ1人(役員のみ)、我々ザンジバルが19人、合計83名で、参加人数が少なかった第一回、第2回大会の約3倍の規模となり、3つのホテルを各国の宿舎とし、近くのレストランに頼んで各チームの食事の手配をしましたのですが、この段階から、ブルンジが食事が口に合わない、量が少ない、宿舎が立派ではないといった去年自分たちの国でもっとひどい状況だったにも関わらず、あれこれとクレームを付けてきて、それらの対応に追われました。(←いかにもアフリカ的です)

また、各国の審判同士が話し合い、ザンジバルの選手に理由もなく指導を与えるよう示し合わせており、また、ザンジバルが少しでもバランスを崩して倒れたらその場で一本負けになるという状況の中で戦わなければならない、つまり一本勝ちしなければ勝てないという大変厳しい状況の中での戦いとなりました。このような状況の中で、選手たちは一致団結し、これらのハンディに正面から立ち向かい、1つ1つ彼らの謀略を打ち砕いてくれました。
試合結果は、下記の通りです。
           金  銀   銅
ザンジバル      6  1   2
ケニア        1  3   5
ブルンジ       1  3   4
タンザニア本土    0  1   2


結果だけ見ると、金6個、銀1個、銅2個と、去年以上の成績でザンジバルチームの圧勝ですが、ほとんどの試合、先に指導ポイントを取られ、後で何とか一本勝ちして勝ちを収めたという大変厳しい試合内容でした。東アフリカ柔道連盟スポーツダイレクターとして今大会を運営し、ザンジバル柔道連盟会長でもある島岡強によると、
「今大会のザンジバルの勝利は、日頃からのほかのチームの2倍の練習量から来る十分なスタミナ、試合形式の練習を繰り返したことによる試合勘、そして他の国にはない技のコンビネーションがもたらせてくれた勝利であり、もしそれらの1つでも欠けていたら、惨敗となっていただろう。審判も含めて大変厳しい状況のなか、よく戦って最高の結果を出してくれた選手たちを、心から誇りに思っている」とのことでした。
また、今大会も、第2回大会と同じように100kg級、無差別級の2階級をオール一本勝ちで制覇したマスーディが、ベストプレーヤー賞に選ばれたことをお伝えします。

これらの試合の結果と様子は、東アフリカ中のテレビ、ラジオ、新聞で流れ、ザンジバルが2年連続優勝し、名実ともに東アフリカ一の国になったことが大々的に報道されました。

66kgアリ・ジュマ、73kgハマディ・シャーメ、100kg&無差別級のマスーディのことは記憶にある方も多いと思いますが、60kgで初優勝したアザンは、ザンジバルの若手ホープと言われながらも、昨年はメダルを逃しており、今年は雪辱に燃えていた選手です。合宿中、先輩達からの愛の鞭(厳しい稽古)に応え、灼熱のザンジバルで文字通りぼろぞうきんのように汗だくになりながら練習を積み、今回の金メダル奪取となりました。

アザンの武器は、先輩アリ・ジュマ仕込みの切れのある内股、しかし、練習中は腕の決めが今一甘く、すっぽ抜けが多く、その部分を口を酸っぱくして治すよう言われていました。それがケニアとの決勝戦で炸裂。腕の決め、足の跳ね上げ共にどんぴしゃの形で決まり、見事な一本勝ちに会場が大きく盛り上がりました。
キャプテンのモハメッドが、アザンの劇的な優勝シーンを見ながら、大粒の涙を流して喜んでいたのが印象的でした。
66kg級は、アリ・ジュマ、ムィニ・アリ、アブドゥルサマッドの3人が金銀銅を独占。国内大会の順そのまま東アフリカ大会の表彰台に立つザンジバル勢の66kg級トリオの雄姿に、大きな拍手が響きわたりました。

涙といえば、73kg級で連続優勝を飾ったハマディ・シャーメ。
81kg級でチームキャプテンのモハメッドが初戦でブルンジの選手に低い背負い投げをかけられ、一本負けを喫して畳を下りると、泣きたい気持ちのモハメッドの前には、こぶしで涙をぐいぐい吹き上げているハマディの姿が。
今大会に向けてのチームを組んだ際、モハメッドがキャプテン、ハマディが副キャプテンとして、1ヶ月半にわたる合宿中、二人とも毎日誰よりも早く道場に来て、一日も休まず畳に立ち、ともあれば練習の手を抜こうとする若手たちを叱咤激励し、チームをまとめあげてきた二人には、二人揃って連続優勝するという強い決意がありました。
 そこへ初日の81kg級モハメッドがまさかの一本負け。今までの努力が水泡と化した瞬間でした。ぬぐってもぬぐっても涙の止まらないハマディを逆に慰めるモハメッド。
 そして2日目、ハマディはモハメッドの分まで背負って勝つことを胸に誓って畳に上がりました。そして、大会観戦者の多くにザンジバル柔道ここにありを印象付けた名勝負を展開し、見事な連続優勝をもぎ取りました。表彰台で金メダルをかけられ、左手を胸に国家吹奏を聴きながら、ハマディはモハメッドとともにそこに立っている気持ちになっていたのでしょう。

100kg超級を制したのは、アブダラハマン(写真下:中央)気は優しくて力持ちを地でいく心優しき大男。軍隊に所属しながら柔道家と陸上選手(砲丸投げ)をかけ持つスポーツマンで、ザンジバルでは、「ボロ」のニックネームで人気者です。
ブダラハマンが金メダルを授与された後は、チームの面々や子供たちからもみくちゃにされながら祝福を受けていました。

 
大会一日目の開会式は、ザンジバルの副首相と文化スポーツ省大臣を兼任しているシャムフナ氏と、在タンザニア日本大使の中川坦氏、2日目の閉会式は文化スポーツ副大臣サビットコンボ氏とタンザニアオリンピック委員会会長グラム氏がそれぞれスピーチとともに第3回東アフリカ柔道大会の成功を称えてくれ、参加選手たちの気持ちを盛り上げてくれました。

大会運営については、大変ローカルだったケニアやブルンジでの開催とまったく違い、国際大会規定に沿った十分な広さの畳、電光掲示板による試合進行など、国際大会として十分なレベルの大会となり、大会用ポスター、大会バナー、選手一人ひとりの参加者カードなどの準備も万端で各国チームを迎えたので、ザンジバル勢をなんとか引きずり落とそうという意見で一致している外国チームたちでしたが、大会運営という面では参加した各国のコーチやオフィシャル達からも絶賛の評価を受けました。

大会終了後は、コーチを務めたハジ・ハッサンやキャプテンのモハメッド、レフリーを務めたリラやアブダラの声もガラガラにかすれ、選手だけではなくザンジバル柔道連盟全員で力を振り絞っての総力戦の結果が出せたことを互いに確認し合い握手を交わしました。
 
 来年の第4回東アフリカ柔道選手権大会の開催国はケニアとなり、各選手とも、来年ケニアでの再会を期して各国に帰っていきました。
いろいろな問題がありながらも、このような形でザンジバル柔道連盟として、初めての国際大会を最高の形で開催することができ、また去年以上の最高の成績を収めることができたのは、ザンジバル選手たちや関係者の努力もありますが、日本の皆さんの温かい御声援があったからこそです。
皆さまに心からの感謝とともに御礼申し上げるとともに、今大会の成功と勝利を共に分かち合いたいと思います。
ありがとうございました。

ザンジバル:メダル受賞者
60kg級  金K.アザン・フセイン
66kg級  金A.アリ・ジュマ
      銀M.ムィニ・アリ
      銅A.アブドルサマッド アラウィ
73kg級  金 H.ハマディ・シャーメ
81kg級  銅 S.サダラ・ハミシィ
90kg級  銅 U.ハルファン・アリ
100kg級  金 K.マスーディ・アムル
100kg超級 金 M.モハメッド・アブダラハマン
無差別級  金 K.マスーディ・アムル
最優秀選手   K.マスーディ・アムル

「第3回東アフリカ柔道選手権大会ザンジバル2009」への6件のフィードバック

  1. 今晩は、バラカさん。
    本当に久しぶりの投稿ですね。元気そうで何よりです。それに、とってもすばらしい成績を残されたザンジバルの選手勢のりりしい姿にこちらまでうきうきさせられますね。ご主人様の活躍にも頭が下がる思いです。
    バラカさんも、さぞお疲れのことと思います。また、素敵な記事を楽しみにしてますね!
    河野さんも、一人で記事の投稿、よく頑張っておられるな~と感心してました。

  2. こーでねーと

    バラカさん、ジャンボ!!
    日本の柔道が世界中で大会があったりするのってなんか不思議な気分です。
    メダルの数も凄いですが、選手の皆さんいい顔してますね~。

  3. baraka_tanzania

    ☆megさん、ジャンボ!
    2ヶ月半ぶりの投稿だったので、管理画面に入るパスワードを忘れてしまい、あせりました(笑)
    ちょっとまだしばらくパソコンに向かえそうにないのですが、バラカジャパン河野ががんばってくれているので安心です。
    私の方は超マイペースで参加しますので、ポレポレお付き合いくださいね。
    柔道へのあたたかい応援ありがとうございます。いろいろなことがありながらも、いい結果が出て、ほんとにみんないい笑顔で、私もとってもうれしかったです。

  4. baraka_tanzania

    ☆こーでさん、ジャンボ!
    日本の柔道ですけど、ほんと今は世界の柔道ですね。
    アフリカの各地でも、さまざまな柔道大会が開催されていますよ。
    選手たちも、試合中はほんとりりしい表情で、試合後はいい結果とともにとってもいい笑顔がたくさん見られて、私も嬉しかったです。

  5. バラカさん、ジャンボ!
    タンザニアチームの優勝おめでとうございます!
    国が違えば何もかも違うのでしょうが、
    >各国の審判同士が話し合い、ザンジバルの選手に理由もなく指導を与えるよう示し合わせており
    って、ひどいですね。
    アンフェアなかんじがします。
    中立ができないところでの試合は大変だったと思います。
    苦楽を共にできる仲間がいることは羨ましくもあります。
    打ち込めるものがあるって素敵です。

  6. baraka_tanzania

    ☆konekoさん、ジャンボ!
    ありがとうございます!
    (東アフリカの中では、ザンジバルとタンザニア本土は別々のチームとして参加しているので、ザンジバルとしての優勝でした)
    ザンジバルが東アフリカ大会のホストカントリーとなったことで、柔道というテーマーで、多くの人たちと気持ちを1つにしながら努力してきましたが、大きなけがもなくいい結果も出せ、各国選手たちもそれぞれ笑顔で帰っていったので、ほっとしています。
    アフリカの柔道界において、公正さを欠く審判の在り方は、是正すべき大きなテーマだと思います。

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