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キリンのベイカー逝く、すばらしい絵と笑顔をありがとう。どうぞ安らかに

3月16-17日に開催された、第12回東アフリカ柔道大会2019でザンジバル優勝!の朗報から一転して、今日は、とても悲しいお知らせです。
「キリンのベイカー」として人気だった、ティンガティンガ・アーティストのベイカーさんが、2019年3月18日に急逝されました。

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【最後まで、バラカ用の絵を描いてくれたベイカー】
私達は、ちょうど、第12回東アフリカ柔道選手権大会2019のため、ダルエスサラームに行っていて、大会の前日3月15日に、ティンガティンガ村へ行き、ベイカー本人から、注文していた中サイズの絵を受け取ったばかりでした。その日は、いつものように明るく元気なベイカーだったので、まさかその3日後に亡くなるとは夢にも思いませんでした。
柔道大会が終わった3月17日の夕方に、ティンガティンガ村に直行しましたが、ベイカーの姿はなく、バラカ用に描きあがった小サイズの作品が、きれいに机の上にならべてありました。
あまりにも美しい作品だったので、見ほれながら撮ったのが、この写真ですが、まさか、これが遺作になるとは・・・いまだに信じられません

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島岡会長からベイカーに電話をすると、
「疲れたから家で休んでいます。明日会いましょう」
とのことでしたので、私たちも、ただの疲れだとばかり思っていました。
翌日、早朝にベイカー本人から電話があり、昨夜、マラリアで緊急入院したので、病院にきてほしいとのことだったので、急いで病院に行きました。
入院しているのは緊急病棟で、面会には一人しか入れなかったので、会長一人で中に入り、一つのベッドを二人で使って寝転がっているベイカーに、様子を聞いたところ、
「マラリアで、足が痛い」
と言っていたそうですが、そのとき、ベイカーの頭をさわったら、熱くなかったし、足が痛いというので、マラリアにしてはおかしな症状だなと思ったそうです。
私は病室の中には入れませんでしたが、窓から部屋の中が丸見えだったので、ベイカーが寝ている様子を窓の外から見ていました。
あれが、ベイカーとのお別れの時になってしまいました。
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【訃報】
お見舞いの後、仕事をすませ、ザンジバルに帰るために向かった空港で、ベイカーの訃報を聞き、島岡と、一緒にいたスタッフのルーカスと三人で絶句しました。
ほんの3時間ほど前に会ったばかりだったのに・・・。
1973年9月1日生まれのベイカー、本名Bakari Abdallah Wasia 享年45歳
・・・ほんとうに、早すぎる死でした・・・。
訃報を受けて以来、ベイカーとの15年にわたるいろいろな思い出がよみがえってきて、ベイカーを亡くした悲しみと、ベイカーへの感謝とが交互にあらわれ、心定まらぬ日々ですが、「いつ、だれがどうなるのか」というのは、天の采配であることを、つくづく思い知らされています。
それにしても、小さな子どもたちとともに突然夫に先立たれた奥さんのことを思うと、言葉がありません・・・。
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【今年の夏に、日本へ行くのを楽しみにしていました】
実は、ベイカーは、今年(2019年)春の招聘アーティストのヤフィドゥに続いて、夏2019の招聘アーティストに決まっており、久しぶりに日本に行くのをとても楽しみにしていました。
「名古屋の暑い夏も、大好きだよ!」
「日本にいったら、会いたい人がたくさんいる!」
と言っていました。
ベイカーに会いたかった人も大勢いらっしゃることと思います。
太鼓腹を揺らし、すきっ歯で、「でへへ」と笑っていた、明るく陽気なベイカー。

「キリンのベイカー」といわれるほど、キリンの絵が得意だったベイカー。
どんどん繊細でスタイリッシュな絵になって、アーティストとしてぐんぐん頭角を現したベイカー。
「ティンガティンガ村のアーティストたちと、バラカといっしょに力を合わせて、ティンガティンガ・アートを発展させ、進化させながら、世界中の人たちにティンガティンガを知らせていきたい」
と語っていたベイカー。

あーしてほしい、こうしてほしいという、細かい注文も嫌がらず、時には描き直しをしてもらうことまでありましたが、いつも、
「これからも、いっしょに前進していきたいからがんばるよ」
と言ってくれたベイカー。

2015年、札幌展用に、「アイヌ紋様」をもりこんだ作品を依頼したとき、
「初めてのことってむずかしいんだよね」
といいながらも一生懸命描いてくれました。・・・が、最初のは、たしかにバランスが悪くて、何度か描きなおしてもらいました。
そのうちに、アイヌ紋様がしっくり絵の中にくみこまれるようになり、絵が生き生きしてきました。ベイカー自身も、自分のものにしたという感覚があったようで、札幌展がおわってからも、時々アイヌ文様を織りこんだ、美しい作品を描いていて、ティンガティンガ村(工房)の壁に飾られていたのも、なつかしい思い出です。

これは、アフリカンプライドティーのパッケージがリニューアルされた年。
「この紅茶、うまいよね!オレをCMにつかったら?」と笑っていたベイカー。

正面から見たキュートなキリンが登場★夜のサバンナも幻想的でした。

「しあわせのなる木」をリクエストした年。

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【ザンジバルの柔YAWARAヤワラギャラリー】
ザンジバルのオールドタウンで、2017年にオープンした、「YAWARAヤワラ」(柔道家たちが生計を立てながら柔道を続けられるようにという目的で始めた、整体マッサージとティンガティンガのお店)用にも注文していたのですが、ベイカーは夏の招聘アーティストに択ばれたために、バラカ用の作品作りで忙しく、なかなかヤワラ用の絵まで手が回らずに日が経っていました。
でも、ベイカーはちゃんと覚えてくれていて、
「ヤワラ用の絵も描けたよ」
と渡してくれたのが、柔道大会の前日、最後に会ったときのことでした。
美しいピンクと、エメラルドグリーンの中に、モノクロキリンが映えたすばらしい作品だったので、
「ベイカー、ありがとう、ムズリサーナ!(とってもすてき!)早速ヤワラに飾るね」
と言うと、
ベイカーは、「忙しかったけど、やっと描けてよかったよ、でへへ」
と笑っていたのが最後の会話となりました。
ザンジバルに帰ってすぐにヤワラにもっていき、スタッフに、ベイカーの急逝を知らせ、遺作となった絵を見せると、整体マッサージのセラピスト、ハミシィ(柔道90kg東アフリカチャンピオン)も、ティンガティンガギャラリー担当のアシアも、ベイカーの急逝に驚きながらも、作品の美しさに、しばし見入っていました。

ザンジバルのオールドタウンにある、YAWARAヤワラギャラリーで

ベイカーが遺してくれた作品は、どれもほんとうにすばらしいできばえで、まさに、「キリンのベイカー」としての集大成になっているような気がします。
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どんなに悲しくても、信じられなくても、ベイカーは亡くなり、すでに葬儀もおわりました。
のこされた私達は、ベイカーを弔うためにも、ベイカーが安心して旅立つことができるためにも、ベイカーの遺志を大切に、これからも、日本各地でティンガティンガ展を継続しながら、ティンガティンガ・アートをひろめていかなくてはと、バラカ一同気持ちを一つにし、励ましあっています。
ベイカーは、私たちバラカ全員にとって、すばらしい絵を描くティンガティンガ・アーティストであり、大切な友人であり、ティンガティンガ・アートの発展を志し、共に未来を語ることができる同志でした。
あなたのことは絶対に忘れません。
あなたの作品も、あなたの笑顔も、大勢の方々の元で、生き続けるでしょう。
ベイカー、すばらしい絵と、たくさんの楽しい思い出をありがとう。

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今となっては、ベイカー自身が日本に行くことはできませんが、ベイカーが描いたすばらしい作品たちが、きっとこれからも、日本とタンザニアの架け橋になってくれると信じています。
私たちバラカは、今年も、GWの横浜展(ギャルリーパリ@日本大通り)、5月の名古屋展(妙香園画廊@栄)をはじめ、各地でティンガティンガ展を開催し、ベイカーの作品を大切に紹介していきますので、ぜひ最寄の会場で、ベイカーのキリン作品をご覧いただき、ベイカーの笑顔を思い出していただければ幸いです。
『キリンのベイカーこと、ベイカーさん、ありがとう。どうぞ安らかに』
                 島岡由美子
バラカ主催ティンガティンガ展@横浜・名古屋のご案内は、→こちら。
バラカのイベント情報は、こちらです。

「キリンのベイカー逝く、すばらしい絵と笑顔をありがとう。どうぞ安らかに」への2件のフィードバック

  1. baraka_tanzania

    ☆☆☆さん、
    「突然逝ってしまわれたベイカーさん悲しいです。
    もう一度会いたかった。
    今は 部屋に飾ってあるあなたの絵を見ながらお祈りします。 」
    とのコメントありがとうございます。きっとあたたかい追悼のお気持ちがベイカーに届いているとおもいます。
    また、ベイカーも自分の作品を飾っていただくことがとても励みになるといていたので、きっと大切に飾って思う出してくださっていることを知ってとてもなぐさめられているとおもいます。  どうもありがとうございました。
       

  2. baraka_tanzania

    ☆☆☆さん、
    「ベイカーさんの絵が大好きでした。
    人生って分からないものですが、ベイカーの作品はみんなからずっと愛され続けることと思います。
    ご冥福をお祈りします。」
    とのコメントありがとうございます。
    そのあたたかい追悼のお気持ちは、きっとベイカーに届いていると思います。
    このようなお言葉をいただくと、あらためて、ベイカーがほんとうにたくさんの方々にあいされていたこと、みなさんの心に残る愛にあふれた絵を描くすばらしいティンガティンガ・アーティストだったことを実感します。
    どうもありがとうございました。

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