やっと、日本ータンザニア間の国際郵便が復活し、読みたかった本が届いてとっても嬉しい今日この頃。
(コロナ禍で、長期にわたって、国際郵便がストップしていましたので)
今回届いたのは、この本です。
「一篇の詩に出会った話」
楽しみにはしていたのですが、詩の本を前に、わかるかな?と、実は少し不安でした。
というのも、私の中で、詩というのは、個人の心の中を描くので、比喩が多かったり、表現が端的過ぎて、なにをいっているのかわからないというイメージがあったので、詩の本を前に構えてしまったからです。
微積のうた
びぶーん ぶんぶん
せきぶん ぷんぷん
どっちも どちらも
ちんぷんかんぷん
byしまおかゆみこ
これは、高校の時に、数学(微分積分)がわからなすぎて、授業中にノートに書きなぐった私の唯一の「詩」です。
これでおわかりのとおり、私にはまったく詩心がないので(笑)、ちょっと不安だったというわけです。
という感じで、「詩」には苦手意識のある私ですが、この本は、「詩集」ではなく、詩自体を紹介するというのでもなく、11人の方々が人生の中で出会った詩や言葉で、どんな影響があったかという体験談をインタビュー形式まとめたものだったので、とてもよみやすかったです。
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ご自身にとっての大切な一篇の詩を語られた11人の方々の職業は、詩人、小説家、歌人などなど。
どんな高尚な詩が並べられるのか、私にも理解できる詩なのかと、ページを開くまではちょっとどきどきでしたが、「奥様は魔女」のナレーションや、大槻ケンジさんの歌詞まで飛び出して、それぞれ、とっても自由な感覚で「詩」をとらえておられるんだなっていうことが伝わって、私の心を自由にしてくれました。
6番めに登場する出光良さんのインタビュー箇所で出てくる、立原道造という詩人の「中学一年はだれでも」という詩がとても好きになりました。
そして、この詩人は、亡くなる寸前に
「五月のそよかぜをゼリーにしてもってきてください」
っておっしゃったのだそうです。
うわ~、死の床でこの言葉が発せられるなんて、ほんとうに詩人を全うされた方だなって感動してしまいました。
この本を読まなかったら、立原道造という詩人の詩も、このエピソードも、一生知らなかったと思います。
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能町みねこさんのインタビューの中にあった、「だ・である」調の中に「です」が出てくるお話にも、すごく共感しました。内容は、・・・ぜひ本の中で読んでみてくださいね。
人は、誰も、人生のどこかで、なにか自分の琴線にふれる詩(言葉)に出会っているものなのでしょう。
でもそれって、なかなか人には話さないものだし、話す機会のないことなのかもしれません。
筆者は、多くの詩書編纂に携わり、近代詩を広める活動をしているPippoさん。
あとがきでは、20代のころ、つらかったときに救ってくれた詩のエピソードも書かれていました。そんな体験をお持ちだから、こうやって11人もの個性あふれる方々の、心の奥にある詩(言葉)を聞き出せたのかもしれませんね。
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出版元は、ティンガティンガ・アート絵本「どうぶつたちのじどうしゃレース」中学生からの志本「アフリカから、あなたに伝えたいこと」と同じ、「かもがわ出版」で、10月に発刊されたばかりです。
この本の中に織り込まれていた、「かもがわ出版新刊案内」の中に、「アフリカから、あなたに伝えたいこと」を発見!!
「世界を知る」という項目のところにはいっていました。
恒例になってきた(?)本の集合写真も、パチリ☆
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この本を読んだ後、私の心の中に残っているのはどんな詩だったのかと考えたとき、星野富弘さんの花詩画集「鈴の鳴る道」の中の一篇が浮かんできました。
中学校の体育教師として指導中の事故で首を骨折、寝たきりになってしまった星野さんが、唯一動かせた口にくわえた筆で、花のスケッチをし、水彩絵の具で採色し、詩を添えた作品と、エッセイをまとめられた詩画集。
有名なのでご存じの方が多いと思います。
私も二十代でこの本に出会って感動し、ザンジバルまでもってきて、時々見返しています。
一日は、白い紙
消えないインクで 文字を書く
あせない絵の具で 色をぬる
太く 細く 時にはふるえながら
一日に一枚
神様がめくる 白い紙に
今日という日を綴る
(「鈴の鳴る道」P79より引用
ちなみに、表紙に使われている花の絵「秋のあじさい」が、このページの絵です)
みなさんにとっての一篇の詩は、どの詩(言葉)でしょうか?
いつか教えてくださいね。
島岡由美子
「一篇の詩に出会った話」
かもがわ出版
「詩との出会い」で人生が揺さぶられることもある―。
11名の胸の小箱をそっと開けて。近代詩伝道師Pippoときく、とっておきの話。